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Fri 30/09/2016

不確かで不透明な世界だけど、それでも

☆この記事は☆

2014年07月06日付のわたしのメインブログ、「ゆすらうめ異聞 雑想記」の記事を、ほぼそのまま再掲載したものです。

日々更新中の「雑想記」では、その名のとおり、『春抱き』のみならず、日常のあれこれやその他の「好き」をランダムに発信しています。

カメラや写真、歌舞伎、スポーツ、時事問題、本やマンガのレビューなどなど。

そうした記事の中から、『春抱き』関連、その他の本やマンガのレビューに相当する記事を抜き出して(あるいはそういう記事がメインのブログをまるごと)、この「恋歌」に転載しています。

特に元記事を再編集していないため、関係ないネタも混ざっていますが、ご了承ください。

レビューを読む前には、上の「使用上の注意」をご覧になってくださいね。







●眠い・・・

そしてなぜか起きてる(笑)。

おかしいですね。

うぐぐ。





●何日か

前のニュースですが、今ちょっと読んだので。

アシスタントの初連載が2日前に取り消し 「進撃の巨人」作者「漫画家の人生を考えろ!」と激怒

新人漫画家の連載中止に業界あ然

ひでえ。

本当にひどい話だよなあ。

法律的に見れば、フツーに訴訟で勝てるレベルの話です。

※その気になれば、ね。

実際には裁判をしたら、仮に勝ったとしても、今後この業界で干されちゃうリスクのほうが高い。

新人マンガ家の立場、弱いであろうというのは想像がつきます。

マンガで食っていきたい人にとっては、ほぼ泣き寝入りを強要されるのに等しい。

捨て身の覚悟じゃないと、「出るところに出る」こともできないだろうなあ。

理不尽ですよね。


今回だって、たまたま有名なマンガ家が取り上げたからこそ、ネタになった。

ある程度はマスコミにも取り上げられた。

これってある意味、不幸中の幸いかも・・・?

(その彼だって、「出版社批判をした」ということで、この先どっかで不利益をこうむらないとも限らない?)


もちろん、この作家さんの作品は知りません。

読んだことないし、読む予定も特にない(笑)。

東京都青少年健全育成条例の「不健全図書指定」に引っかかるおそれがある。

―――ってことは、きわどいエロなんだろうな、と。

そう思ってます。

もしかしたら、わたしの毛嫌いするジャンル/系統の人かもしれない。

(男性向けエロを全否定はしないけど、極端なロリとか、グロとか、りょーじょくとかは勘弁!)

でも、そういう問題じゃないんだよなあ。


漫画家さんの世界はよく知らないので、聞きかじりになりますけど。

商業誌(この場合はウェブ上だけど)での連載が決まる。

―――新人さんにとっては、大変なチャンスですよね。

ちゃんと担当の編集さんがついて、打ち合わせをして、ストーリーを考えることでしょう。

編集部のほうだって、未知数の新人であればあるほど、監督の目はきびしいはず。

ネームのチェックも細かいだろうし、ダメだしもするでしょう。

無料のウェブ漫画だそうですから、「いずれまとめて出版する」のが大前提。

そうじゃないとお金になりませんものね。

何が言いたいのか、というと。

今回のこの気の毒なマンガ家さんがすでに描いていた “連載5話ぶん+α” ってのは、

“編集の指導、チェックや描き直し指示などが存分に入った結果、完成された作品”

のはずだ、ということです。

それが連載開始の二日前にいきなり中止って、どういうことなの。

おかしいでしょう?


1. 編集部がちゃんとこの新人マンガ家を指導・監督して来なかった

2. 問題なく出版できると、編集部が独断で判断していた

3. 問題なく出版できるかどうか、書籍営業部との交渉・すり合わせが不十分だった

4. その他、わたしには想像もつかない理由

最後のは別にして、それ以外のどれが理由であっても、悪いのは編集でしょう。

ロクにチェックもせず、新人を野放しにしてたのか?

何十ページも描かせてから、「こらアカン」って思ったのか?

大丈夫だろうと思ってたら、出版できないよ、と言われて慌てたのか?

連載の依頼をするってことは、作家がそれを引き受けた段階で「契約成立」。

書面であろうとなかろうと、契約は契約です。

(実務的には、裁判で契約の詳細を検討する際に、文字にしたものがないと困りますけどね。)

それを一方的に反故にはできないはず、なんだけど。

いやいや、それ以前の問題ですよね。

編集の落ち度は隠しようがないけど、もしも原稿に問題があって、

「このままでは出版できない」

というのなら、どうして作家さんに描き直すように言わないんだろう。

はじめはOK出していたものを、あとで「やっぱりダメみたい」はカッコ悪い。

自分に見る目がないってことだもんね。

でも作家さんだって、モヤモヤしたとしても、連載中止よりは手直しを選ぶのでは・・・?

「いやあ、都の条例がさー、最近きびしくってねえ」

とか言われちゃうと、釈然としなくても、誰も文句はいえないと思うけど。

うーん。

手直しで済むレベルじゃなかったってこと?

じゃあなぜ、編集部が早い段階で・・・ってことで、話はふりだしに戻ります。

わけわからん。


少なくとも、編集部はこの新人さんにお詫びした上で、補償をすべきでしょうね。

どういう話し合いがあったのか、報道されてないから知らないけど。

そしてあとは、この原稿がムダになりませんように。

どこかの誰かが、救いの手を差し伸べることを期待します。



なお>>

最近こっち方面の規制といえば、こんな記事がありました。

Google「ロリ八分」発動で同人サイトのアクセスが激減 過剰な“言葉狩り“との批判も

【妹ぱらだいす】不健全図書の理由とは 近親相姦の「不当な賛美」って何?

いずれも、アレだ。

内容的には、誉められたもんじゃありません(笑)。

「こりゃヒドイ!」
「規制されてもしょうがないでしょ」

と思えるものも、実際には結構ある。

健全な腐女子のわたしたち(ゲホゲホ)には関係のない、対岸の火事にすぎない。

・・・って、思ってません?

思いますよね?

男性向けの(一部の)過激なエロ描写と一緒にしないでよ、って(笑)。

でも、無関心でいてはいけないと思うのです。

だって、いつこっち方面に、火の粉がかかってくるかわからないでしょう?

あまりおおっぴらに擁護しにくい、誉められたもんじゃない趣味嗜好。

そういう分野だからこそ、ターゲットになったときに脆い。

「大義名分」のあんまりない世界、なのです(汗)。

今はまだびーえる系は規制がゆるいほうだけど、今後どうなるかはわからない。

規制の矛先が、いずれこっちに向くかもしれない。

そうなったとき、わたしたちの好きな作品は全部、無事でいられるんだろうか・・・?

今は大丈夫でも、いつか風向きが変わるかも?

こればっかりは想像がつきません。


そもそも不健全図書って何なの。

―――これを考えると三日ぐらい寝られないので、やめておきます(苦笑)。

むずかしいですよね。

健全なものだけしかない世界に、ひとは棲めないと思うけど。

(シューベルトの「ます」的な。)

でも子供の目に触れてほしくない書籍が存在するのも、厳然たる事実。

どこで線を引くのか。

簡単に答えは出ません。





●もうひとつ

同じ世界のお話。

ニトロプラスが二次創作のガイドラインを改定 「委託禁止」「200個以内・10万円未満」に賛否両論

ニトロプラス 著作物転載ガイドライン

ドキリとしました。

二次創作をどう扱うか。

原作=もともとの商業作品の著作権を持つ企業の規定したガイドラインです。

※あくまで、いち企業の規定。

ポイントは、三つほど。

☆一定の条件下で、二次創作をはっきりと容認している

☆「非営利」の基準が比較的まっとうである(と思う人が少なくない)

ここまでは、日本の同人文化にとって悪い話じゃない。

「非営利」の基準はきびしいと思いますが(後述)、理不尽ってほどでもない。

コンテンツでもうける企業の立場に立ってみれば、わからなくもない要請です。

問題は、まさにその “まっとうであること” らしい(笑)。

☆妥当性のある基準だけに、これが業界全体に援用される可能性がある

と、どうなるのか?

もっとゆるい基準を採用している企業や、二次創作を(ほぼ)自由に認めている企業。

そういう人たちも、この基準を参考にするのではないか?

そうなると、現在の二次創作カルチャーは大きく変わることになる。

「二次創作OK」の流れを拡大しようと運動してる人たちにとっては、大きな打撃になりますよね。

さて、どうなるかねえ。


その「非営利」の基準ね。

条件がいろいろあるので、詳しくは上記のリンク先を読んでほしいけど、数字だけ見ると、

“200個(冊)、10万円”

がベンチマーク(のひとつ)なのです。

薄い本なら200冊以内で、売り上げ予定額が10万円未満まで。

それを超える場合は、アマチュアであっても版権の許諾申請をしてくださいよ、ってこと。

(もちろん有料です。)

さて、この基準はどのくらいきびしいのか。

「えっ!?」

この世界に関してはド素人に近いわたしが驚いたのには、理由があります。

わたしたちがかつて出した、唯一の同人誌

あれの印刷部数が200冊をちょっと超えていました。

ドが三つくらいつく素人サークルの拙い本が、すでに上記の基準を超えてしまっている。

ってことは、かなり厳しめの基準なのでは・・・?

同人誌の世界に詳しい人たちには、

「ズブの素人で無名サークルの小説本がそもそも200冊も売れるとか、変だよ!」

とは言われましたけどね(汗)。

こっちはそういうのすら知らなかったので、意外でした。

(自慢にきこえたらごめんなさい!)

今になって思うと>>

本編がいちばん盛り上がっていたタイミングでの発行だったし。

ほぼ寡占というか独占というか、ほかに同ジャンルの同人誌が存在しなかったし。

予約制で、最初からどのくらい売れるか予想ができたし。

サイトをすでに運営していたし。

・・・諸条件がプラスに働いたのだと思います。


この企業の示した「非営利」の基準が、今後どのように広がるのか。

広がらないのか。

二次創作にどんな影響を与えるのか。

これからが気になるところです。





●では、

またね。。。

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タグ : マンガ 同人 同人誌 二次創作

EDIT  |  22:38  |  本にまつわる雑談  |  Top↑

Thu 29/09/2016

水魑(みづち)の如き沈むもの (三津田信三)

☆この記事は☆

2015年09月09日付のわたしのメインブログ、「ゆすらうめ異聞 雑想記」の記事を、ほぼそのまま再掲載したものです。

日々更新中の「雑想記」では、その名のとおり、『春抱き』のみならず、日常のあれこれやその他の「好き」をランダムに発信しています。

カメラや写真、歌舞伎、スポーツ、時事問題、本やマンガのレビューなどなど。

そうした記事の中から、『春抱き』関連、その他の本やマンガのレビューに相当する記事を抜き出して(あるいはそういう記事がメインのブログをまるごと)、この「恋歌」に転載しています。

特に元記事を再編集していないため、関係ないネタも混ざっていますが、ご了承ください。

レビューを読む前には、上の「使用上の注意」をご覧になってくださいね。







●こんな

夜中に、大雨警報とか。

いやすぎる。

※東京、千葉、埼玉。


WS000898.jpg


何事もないといいのですが。







●最近の本

本は相変わらず、いろいろ雑多に読んでいます。

再読も多い。

が、なかなかレビューを書くところまで行かないなあ。

全部きちんと記録しようと思うこともあるけど、無理っぽいですね。

時間がないか、そこまでのモティヴェーションがないか。

そういう感じです。







「水魑(みづち)の如き沈むもの」
三津田信三
講談社文庫

大ざっぱないい方をすれば、三津田信三は現代の横溝正史。

(いや、それだけじゃないけど。)

このシリーズの探偵役=刀城言耶(とうじょうげんや)はさしずめ、現代の金田一耕助か。

(いや、言耶の職業は怪奇幻想作家であり、全国を旅して怪異譚の蒐集をしてるわけですが。)

乱暴な紹介ではあるけど、だいたいこんなところじゃないかと思います。

当たらずといえども遠からず。

三津田さんには、純粋なホラー小説も多い。

そういうの、好きな人は死ぬほど好きだものね。

ちなみにわたしはホラーは好みではない(笑)。

理屈の通らないひたすら怖い話だけ・・・には、あまり魅かれないタチです。

おどろおどろと不気味で、因縁だの因習だの、タタリだの呪いだの。

忌み山だの、憑き物だの、ここで声をかけられても決して振り向いてはいけない、だの。

そういうのだけなら、のーさんきゅう。

ただね、そういうホラー要素に埋もれた謎だの、確執だの、因縁だの。

そこから起きる怨恨だの、殺意だの、不可能犯罪だの。

そしてそれを合理的に、現代人の(だいたい)納得できるかたちで解決してくれるお話(=ミステリ)。

となると、途端に大好物になります(笑)。

どうしてだろうね?(笑)

「そんなん、似たようなもんじゃん!」

って人もいると思いますが、わたしにとってはえらい違いなのです。

結局、謎解きが楽しいんでしょうね。

どんなに怪奇浪漫的に見えても、さいごには現実的な答えが見つかる。

どれほど気味の悪い事件でも、死霊や蛇神さまのタタリではなくて、人間の仕組んだ犯罪である。

その謎が解かれるプロセスが楽しくて、また、ほっとするんでしょうね。



というわけで、さて。

わりと最近読んだのが 「水魑(みづち)の如き沈むもの」 です。

刀城言耶シリーズの長編では、5本目。

本格ミステリ大賞の受賞作で、「このミステリーがすごい!」での評価も高かった。

“ホラーとミステリーの見事な融合”

ってのが、このシリーズの売り。

そらもう、大いに期待して読みはじめました。


※以下、ネタバレはないけど若干は小説の内容に触れています。


・・・が、あれれ。

「んん???」

実際に蓋を開けてみると、どうも勝手が違う。

いや、たしかに悪くないんだ。

期待通りの設定だし(ある意味では予定調和)、おどろおどろした因習もばっちり。

水魑(みづち)という謎の神様もおもしろい。

怪しげな登場人物もたっぷりで、しよく出来ていると思う。

思うけど、どこか薄い。

なんだろう、どこか邪悪さが足りない(笑)。

ライト感覚なのです。

さらさら読みやすいけど(いつもの)中毒性はない、とでもいえばいいのか。

うーん?

なんだろうね???

濃厚な民俗学的ワールドに没頭できない、そんな感じ。

自分なりに、その理由を考えてみました。



ひとつめ。

「厭魅(まじもの)」「首無(くびなし)」「山魔(やまんま)」にあるような、圧倒的な怖さ=ホラー要素が薄い。

※上記はいずれも同シリーズの先行作品。

得体のしれない薄気味悪さ。

いつ何が誰に起こるか、まるで見当のつかない不気味さ。

同じ日本、おなじ昭和(戦後まもなく)なのに、こんな場所に紛れ込んでしまったら怖すぎる。

そう思わせる邪悪な空気を、そこまで感じない。

常識ではあり得ない設定と、もっとあり得ない(極端な)人物造形。

・・・にもかかわらず(笑)、そういう世界が日本のどこかにあるのだと思わせる。

圧倒的なパワーとディテールで、積み重ねられる怪異譚で、読者をねじ伏せて納得させてしまう。

このシリーズの強みはそこなんだけど、今回そこがやや欠ける。

そうとしか思えません。

たとえば「厭魅(まじもの)の如き憑くもの」には、まじもの、カカシ様、ナガボウズ。

山神様、ナガナワ、生霊、その他もろもろ。

何種類も、何重にも怖くて正体不明の、その土地に根差した怪異があった。

その地名の由来から、登場人物の名前に至るまで、あらゆるところに歴史と謎と怪異がひそんでいた。

文句なしに怖かった。

要するにアレです。

「こわいよー、夜中にトイレに行けなくなるよ!」

的な、昔ながらの怪談としての薄気味悪さがあった。

正体の知れない邪悪な何か。

人間を襲う何か。

そういう過剰なまでの怖いナニかが、水魑(ミヅチ)にはない。

山の奥の大きな池にひそむ何か。

ときに大雨で田畑を流し、ときに旱魃で村人を困らせる何か。

―――うん、こわいよ。

たしかに怖い。

でもそれは、既存の(この場合は龍神様みたいな)神様に似てる。

ありえない、考えられないほど異様な、底知れない悪意とはほど遠い。

呪われた村を覆う大いなる悪しき影・・・のような存在であるはずなのに、怖さが足りない。

どこか、弱い。

そう思ってしまったよ。



ふたつめ。

リアリティとの兼ね合い。

個人的には、こっちのほうが致命傷かもしれない。

上記のとおり、三津田ワールドは昭和の前半が舞台です。

戦後まもなく、おそらく昭和20年代後半くらい。

都市部からとおく隔絶された超田舎の山村であり、独特の因習バリバリ。

人々は信心深く・・・というより、かなり迷信深い。

神社の宮司が祭祀を取り仕切るばかりか、ほぼ村を仕切っているような状態。

・・・という前提条件をもってしても、アレだよ。

それでも現代であり、日本のどこかなのです。

そうであれば、変事が起こりひとが異常な死を遂げれば、当然ながら警察が呼ばれるはず。

警察に介入されたくない心理が村サイドにあったとしても、そこには限界があるはず。

でもねえ。

このお話には、警察の介入を頑なに拒否する長老が登場します。

彼の理屈は(屁理屈だけど)わかるから、それ自体はいいのよ。

そういう頑固な、自分勝手な、前時代的な老人がいてもいい。

でも、彼の脅しの手段がヒドイ。

(もし警察に知らせたら、○○がどうなってもいいのか・・・知らんぞ? 的なやつね。)

お粗末なまでにヒドイし、それに屈してしまう周囲(刀城言耶含む)の言動もひどい。

「いや、そこは強行突破でしょう?」

「いや、オマエが警察に行って説明しろよ」

ツッコミどころが多すぎて、クライマックスなのに冷めてしまう・・・(汗)。

「いや、それはないよ・・・」

どうしても警察を排除するなら、別の方法を考えるべきだったと思う。

もうちょっとリアリティのあるやり方。

「警察が来られない」

都合のいい設定なんか、いくらでも考えられる訳です。

ミステリ書きには有名な、「吹雪の山荘」的な、ね。

(交通も連絡手段も寸断され、犯人も被害者も探偵役もみんな同じ館に閉じ込められる・・・的なストーリーは、ミステリ書きが一度はつかう設定だと思う。)



みっつめ。

はっきり言おう。

このシリーズのほぼ唯一の弱点は、常連キャラにあまり魅力がないこと。

―――なのです(爆)。

個人的な評価ですけど、もちろん。

ミステリなんだからこの程度でいい、という意見もあるでしょう。

だけど、ミステリ=人物造形が未熟、というのはあまりにも早計です。

(宮部みゆきや高村薫を例に出すまでもなく、緻密な人物描写を得意にするミステリ作家もいくらでもいる。)

でも、残念ながら、刀城言耶シリーズはそうではない。

のよね・・・(汗)。

探偵役の刀城ですら、実はキャラが十分に定まっていない。

人格の重層的な肉付けもあまりない。

彼には変なクセがあって、たしかに特徴的なんだけど、そこもあまり魅力的ではない。

とはいえ彼は、狂言回しとして優秀なのです。

基本的には腰は低いので、読者の反発を買うタイプでもない。

だから「問題はない」、というのがわたしの認識です。

(主人公がイヤなやつだったら、小説を読むの自体がイヤになりますから。)

不幸にもこの作品は、二人のレギュラーの会話から始まる。

阿武隈川烏(あぶくまがわからす、刀城の先輩)と祖父江偲(そぶえしの、編集者)。

シリーズのレギュラーキャラです。

この二人が刀城と、水魑の話をするのが第一章。

それが問題・・・だと、わたしは感じました。

三津田さんは彼らを好きみたいだから、申し訳ないけど(汗)。

この二人に人間的魅力があればね、きっと楽しいんだと思う。

個性はある。

ありすぎるほどある(笑)。

ただ、二人とも人物造形にリアリティがなく非常に一面的です。

好人物でもない。

上辺だけのキャラづけしかされていないため、第一章のもたつきが半端なかった。

文章がヘタなわけではないから、読みづらい、というのは変かもしれない。

でもね、早く終わらないかと、ひそかにイライラしたのは事実です(汗)。



以上、書き殴りでした。



あーあ、文句ばかりですね。

イヤなところばかり強調して書きましたが、私はこの作者のファンなのです。

この人の編み出す独特の世界観。

異様な雰囲気、ホラー要素に満ちた本格ミステリ。

そこが好きで、シリーズもずっと追いかけている。

それだけに今回は、かなり肩透かしを食らった気分でした。

ホラー好きじゃないくせに、ホラー度が足りないとか思っちゃうし(笑)。



しっかし、おかしいなあ。

なんでこれが彼の最高傑作とか呼ばれるんでしょう。

謎である。

それともわたしは、何か盛大な読み落としをしてるんだろうか。

皮肉にも・・・というべきか。

この小説でいちばん興味を引かれたのは、とある主人公家族の引き上げ話でした。

終戦後、満州からの決死の引き揚げね。

悲惨といえばあまりに悲惨なのですが、そこには情と知がたっぷりあった。

重いにもかかわらず、吸いこまれるように読めた。

本筋とは直接の関係がない、あくまで設定部分なんですけどね。



ちなみに>>

口直しに今、「厭魅(まじもの)の如き憑くもの」を読み返しています。

シリーズ第一作。

何度も読み返しているから、さすがにミステリとしての驚きはない。

ないけど、異世界を覗き込んでいるようなぞわぞわ感は濃厚です。

むしろ落ち着いて読めるせいか(犯人あてをしなくていいからね)、細部に目が行く。

ディテールまで凝りに凝って、これでもか、と怪異譚を詰め込んでいるのがわかる。

解決する謎と、解決しない謎。

(前者がミステリ要素で、後者はつまり怪談ですね。)

どっちも怖い。

素直に好感のもてる(非レギュラー)登場人物が多いのもミソ。

これが最高傑作なんじゃなかろうか、と。

あらためて感じつつあります。







●では、

またね。。。

タグ : ミステリー 三津田信三

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