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Thu 05/05/2016

傾く滝 (杉本苑子)

☆この記事は☆

2014年07月24日付のわたしのメインブログ、「ゆすらうめ異聞 雑想記」の記事を、ほぼそのまま再掲載したものです。

日々更新中の「雑想記」では、その名のとおり、『春抱き』のみならず、日常のあれこれやその他の「好き」をランダムに発信しています。

カメラや写真、歌舞伎、スポーツ、時事問題、本やマンガのレビューなどなど。

そうした記事の中から、『春抱き』関連、その他の本やマンガのレビューに相当する記事を抜き出して(あるいはそういう記事がメインのブログをまるごと)、この「恋歌」に転載しています。

特に元記事を再編集していないため、関係ないネタも混ざっていますが、ご了承ください。

レビューを読む前には、上の「使用上の注意」をご覧になってくださいね。







●TBのお題から

「あなたのタイピング!」

早いですよ(笑)。

無駄にけっこう早いと自負しています。

タッチタイピングなども、いつの間にかできるようになっていたので、

「どうやって習得したんですか!?」

と聞かれると答えに窮してしまう。

「・・・ピアノやってたから・・・?」

一応そう答えますが、たいていはバカじゃないの、という目で見られます(笑)。

(自分では半分くらいそう思ってるのに。)

練習ソフトなんかもあるけど、結局は習うより慣れろ。

地道に数をこなせば、それなりの結果がついてくるものだと思います。





●最近は

たらたらと、「鬼平」を読んでいたりします(笑)。

※もちろん小鳥さんの蔵書。

夏はとかく暑くて、集中力も落ちがち。

「鬼平」は短編ベースだし、肩がこることもなくさらっと読めるのでいいですね。



鬼平犯科帳〈1〉 (文春文庫)鬼平犯科帳〈1〉 (文春文庫)
(2000/04)
池波 正太郎

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言うまでもなく、小鳥さんの愛読書です。

子供のころから何回も、何十回も読み返してきた作品だそうです。

その点、わたしはビギナー。

読んでいて疑問に思ったことを、ときどき聞いてみたりします。


で、おもしろい点。

彼女はいろいろ教えてくれるけど、人によって、興味のツボや関心のベクトルって違いますよね。

あたりまえのことなんですが、これがはっきり見えてきます。

「ああ、地図がほしい・・・!」

一話いちわ、読むたびにわたしはそう思うのですね(笑)。

みなさんご存知とは思いますが>>

鬼平というのは、長谷川平蔵というお侍の異名。

※実在の人物。

江戸内外の凶悪犯を取り締まる、火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)の長官をつとめる旗本です。

※行動範囲は江戸のみにとどまらないけど、江戸の話が多い。

彼の仕事っぷりがなかなかに豪快で、盗賊からは

「鬼の平蔵」

と恐れられた・・・というのが、鬼平というあだ名の由来です。

で、地図の話ね。

「鬼平」を読んでいると、詳細な街並の記述が多いのですよ。

○○町三丁目の角をまがって、××藩の下屋敷の塀を通りすぎて・・・

△△寺の裏手から、大川のほとりで船を雇い、◎◎橋をくぐって・・・

とか、そういうのね。

浅草で生まれ育った池波さんならではの、江戸の町の描写。

こういうのを読んでると、とにかくムズムズする(笑)。

「どの辺をどう行ったのか?」

東京の地名なのでおおよその見当はつくけど、細かい路地までわかるわけじゃない。

水路なんかは、今はもうないだろうし。

「どこを、どう歩いたの・・・!?」

気になって気になって、どうしようもなくなります(笑)。

「ああ、江戸の地図がほしい!」

あのルート、このルート、古地図でチェックしたくて。

江戸名所なんとかって絵地図、あったよなあ。

いや、「鬼平」ほどの有名作品なら、地図を載せたガイド本もあるのでは。

あるいはネットで、マニアがルートを図解しているかも。

・・・などなど。

気になってしょうがないんだなあ。

という話を、小鳥さんにするでしょう?

そうすると彼女、きょとん、とした顔をしてる。

それから大笑い。

「ん?」
「あれ?」

つまり、アレです(笑)。

鬼平の江戸を歩く、的な本は実際、出版されているらしい。

(鬼平に限らず、江戸の市中図的なものなら、かなり数があります。)

でも彼女自身は、作品中の人物がどこをどう歩いたか、実際に地図でたしかめようなんて思ったことがない。

そんなことに興味を持ったことがないので、いざわたしを目の前にして、

「いやあ、ホントにこういう人っているんだ!」

「こういう人がいるから、なるほど、鬼平の地図なんてものが出版されてたのか!」

みたいな、奇妙な感動を味わったらしい(笑)。

変・・・?

どっちが・・・?(笑)

「だって気にならない? この船宿はどこにあるのか、あの蕎麦屋はどこにあったのか」
「いや、別に」

そうなのか(笑)。

同じ作品を読んでも、脳のはたらきはずいぶん違うんだなあ、と。

しみじみ感じた次第です。





●同じお江戸の

お話ですが、こちらはどシリアス。

鬼平の活躍した時代から、50年ほど経った後の話です。


傾く滝 (講談社文庫)傾く滝 (講談社文庫)
(2013/08/30)
杉本苑子

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以前から何度もご紹介しています。

杉本苑子の「傾く滝」。

若き日のわたしの愛読書のひとつ。

先日、実にン10年ぶり?に読み返しました。

(ずっと絶版だか在庫切れだかで入手できなかったのを、偶然にも中古で見つけたので。)

やっぱり、いいわー。

やりきれないほど悲しい話なんだけど、ものすごくいい。

ずしりと胸にひびく名作だと思います。


ややネタバレまじりに、あらすじをご紹介すると>>

ときは江戸時代の後期。

主人公は、驕慢で繊細な美少年、のちの八代目市川團十郎。

ひょんなことから溺れかけた彼の命を助けたのが、仇持ちの浪人、宮永直樹。

二人の運命の出会いとその破滅的な恋愛を、丁寧に描いた作品です。

とにかく秀逸なのが、江戸の市井の描写。

当時の歌舞伎界の様子が、江戸の人々の暮らしが、手にとるようにわかる。

そんな錯覚を起こすくらい、綿密に生き生きと、人々の生活が描かれています。

奢侈禁止令が出たりして、芝居や役者たち受難の時代。

その中で暮らす個性的な役者たち、その家族たち。

彼らの派手でハチャメチャな暮らしぶりが、まず面白い。

それと対照的に、つねに陰鬱の気を漂わせた宮永直樹の生活。

彼の境遇(脱藩の経緯や幼い娘との生活)は、やや類型的かもしれない。

おそらく、華やかな團十郎の「影」としての役割なので、それで十分なんだろうなあ。

ともあれ二人は、未来のない関係に溺れます。

直樹にとっては一種の現実逃避、ある種の麻薬そしてサンドバッグ。

(そして自分でも認めたくない、救済。)

少年團十郎にとっては、それでも最初で最後の恋。

これで悲恋にならないほうがおかしい。

(ええ、そうです。わたしのほもレーダーはこの頃から感度バツグン。笑っちゃうくらい。)

最後は、あっけなくも残酷な結末が待っています。

やりきれないし、作者は最後まで容赦がないんだけど、でも。

他にどう終わりようがあったのかと思うと、答えは出ない。

ハッピーエンドなんかあるわけない。

でも、でも、でも・・・!

余韻に鬱々とひたりつつ、何度も読み返すはめになります(苦笑)。

(脳内イメージイラストはむろん、木原敏江さんで。)


ちなみに>>

八代目團十郎の存在も、その生涯も大枠では史実のとおり。

宮永直樹はフィクションですけどね。


最後の最後。

物語の中でつねに豪快で破天荒だった七代目團十郎(八代目の父)が、さびしい老人に見えます。

わがまま放題に生きた人だけど、人生のツケが最後にすべて回って来た感じ。

はかないもんだなあ。


楽しいばかりじゃないけど、小説の醍醐味がてんこ盛り。

500ページ以上あるけど、最後まで読みやすく飽きさせません。

よろしかったら、手にとってみてね。





●では、

またね。。。

タグ : 傾く滝 杉本苑子 鬼平犯科帳 池波正太郎

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